医療法人の組織活性化に効く!
[Mon., 14 Sep, 2015] 昨晩、札幌からANAの最終便で帰京しました。出発も到着も遅れ、23:50に着陸したのですが、なんと「交通費」が全乗客に支給されました(驚)。ありがたく、リムジンバス(深夜便 -> 2,000円!)に使わせて頂きました。感謝!
さて、今回は埼玉県の富家病院グループが提唱し、構築してきた「ナラティブ・アプローチ」について書かれたドキュメンタリーをご紹介します。
チームの書棚
大切なのは、自分が楽しむこと
ビジネスの世界では使い古された「顧客志向」というコトバ。
病院経営において、ようやくボチボチと聞こえてきたキーワードです。
本書の舞台である富家病院グループの理念「されたい医療、されたい看護、されたい介護」がまさに、究極の顧客志向であると言えましょう。
自分の家族を安心して入院させられる病院か?
自分が同じ立場なら、こんなことをされたいか?
職員さんは、こういった判断基準のもと、患者さんや利用者さんの人生に寄り添い参加することを模索していくのです。
「病気を治すことだけじゃない」
医療技術は急速に進展している為、我々はつい提供者側の都合でケアを捉えがちです。
してあげる、施す、といった現場の意識を変えることから、富家病院の改革が始まりました。
グループ施設を「楽しんでもらえる」ように考えられたメディカルホームは、バリ島のリゾートをイメージした建物で「施設らしくない施設」だと好評だとか・・・!
入居者さんで構成される「自治会」が、自分達で生活に彩りを添えるような取り組みを行っています。
もちろん、最初から全員が同意したわけではありません。
中には、面倒くさい、診療ではないので非効率だと言う職員もいたそうです。
そんな時、リーダー達は無理やり彼らを引きこもうとはしませんでした。
「自分たちは正しいことをしている、という強い想いがあれば、行動に移す勇気も出ます(p99)」という信念のもと、地道に活動を進めていったわけです。
ナラティブ・ノートとは?
「その人の人生に参加し、関わっていこう(p68)」と、スタッフや家族、誰もが書き込める”日記兼連絡帳のようなもの。
もちろん、これを書くことは診療報酬に加算が付くとか、残業代が出るという実利はありません。
ですから、現場一人ひとりの意識を変えていく(p95)ことが重要で、職種ごとに従来からある価値観の垣根をなくし、患者・入居者について「みんなで一緒に」考える、という態度を引き出していきました。
理事長・リーダーが直々に「治療ケアに直接関係はないけれど、業務時間を割いてでも取り組みたい重要な事柄(仕事)である(p84)」ことを粘り強く説いて周ったことで、ナラティブ・ノートの運用はわずか5年で定着したのです。
その際に重要な役割を担ったのが「臨床心理士」さん。精神科の無い慢性期病院では、診療報酬に結びつけることは出来ないのですが、今後、常勤をもっと増やそうとしているそうです。ナラティブ・アプローチに対する期待の現れ(p126)ですね。
このナラティブの取組みは「介護甲子園」での最優秀賞(p134)を受賞したことで、全国の注目を集めました。
そして、それ以上に有意義だったのは、介護甲子園への応募準備におけるプロセスが、チームの一体感を構築したことでした。
このチャレンジによって、お互いが一つの場に想いを出し合うという機会を得ることができたのです。
ナラティブ・ホスピタルから学ぶイノベーション経営
特に「人を動かす・巻き込む」点に着目し、マネジメントの視点から学びが深まる点を列挙してみます。
90名からのスタッフが一度に変われることなど不可能。
少しでもナラティブ・ホスピタルのためにしてくれたこと、気を配ってくれたことに感謝を伝えていくのが重要(p133)。
リーダーは粘り強さと信念が大切なわけですね。
どうしてわかってくれないんだ」「どうして動いてくれないんだ」などと相手の足りないところを責めるのは、実は自分が相手の真摯な部分を見逃していただけ(p143)。
まずは相手に共感する、そして本当は・・・を探る、という点は当方が提唱・開発している「共感スタイル構築メソッド」と同じで、非常に勇気づけられます。
「誰だって理解してるハズ」と当たり前のこととして捉えがち。自分の仕事について、自分なりに考えることがあっても、人も同じように考えているかどうかなど、普通は話題にしません。しかし、その状態のままでいると、組織的に共感が生まれず、意識の差やすれ違い、不和が生じてしまいます(p144)。
これを「可視化」し解きほぐすのに有用で強力なアプローチが「レゴ® シリアスプレイ® メソッド」なんですね。前回も取り上げています。
人にはいろいろな感じ方があるからこそ、「相手はどう感じるのか」「その感じ方は自分とどう違うのか?」「どうしてそう感じるのか」「どうしてその人はそういう価値観を持つようになったのか」といったことまで、コミュニケーションの際に気を配る大切さをスタッフ達は学んでいる(p148)。
これ、実際にはとっても骨の折れる、地味な取り組みだと思います。これを5年で定着できたこと自体が、本当に素晴らしいことですよね。
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結論として、病院経営に携わるリーダー、マネージャーさんは、ナラティブ・ホスピタルから、ひとづくりにおける「粘り強さ」「共感力」「好奇心」の大切さを学ぶことができます。
さあ、あなたも本書から「自分が楽しむコツ」を得て、究極の顧客志向に向けて一歩を踏み出しませんか?
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